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■オリジナル作品:「僕のH2O ブログ編」(目次

「僕のH2O ブログ編」 最終回

勉: 僕は生産と消費の交換価値を、「金利とは異なる価値基準の鼎立」として考えたいんです。
A:  これまでの、物理学的な座標軸上の空間を一定に流れていく時間概念が「金利思想」を生み出したわけだから、物理学的な時間論とは異質な、アフォーダンスにおける「異所同時性」と勉さんの「生産と消費の交換価値」とをうまく組み合わせると、新しい社会経済学理論が生まれるかもしれませんね。神経経済学の先をいく「生態経済学」とでもいいましょうか。
勉: これまで物理学者は様々な成果物を生み出してきましたが、初めから自己をその系から除いていたために、自己の拠って立つ「環境」そのものを守ることが(原理的に)出来ないところへきてしまったと見ています。環境を守る思想は、僕の生産と消費論やアフォーダンス理論などの、自己を系の内に含める新しい時空間論からしか生まれないと思います。
A: それが二十一世紀の課題ですね。
勉: 二十一世紀の課題は、それと「言葉」ですね。
A: ああ、言葉ね、先ほど話に出た。
勉: 「まだ名前のついていないこと」を始めることが社会の多様化の本質で、これからも世界の多様性を保つためには、僕たちが言葉をどう新しくしていくか、伝統的な言葉にどう新たな息吹を吹き込むかがやはり重要なんだと思います。
A: さっきは日本社会の多様性保持の話だったけど、考えて見れば、枠を日本から世界に広げても同じロジックなのですね。

勉: 最後にまた生物学ですけど、「減数分裂」というのがあるんです。時間学を研究されているI先生の御本によると、「減数分裂は生殖細胞が作られるときに一度だけ行う分裂で、細胞の持っているゲノムを二セットから一セットに半減させてしまいます。生殖細胞が、相手、すなわち精子か卵子に出会って合体して、ゲノムを再び二セットに増やしたとき、細胞はすべての遺伝子を発現する能力を回復します。老化も損傷も病気も何もかも洗い流して、新しい生命がそこから開始されます。すなわち、時間が新たに生まれ変わります」ということで、「生殖細胞は、過去に生きたヒトから託された、永遠を伝える役目を負った細胞」なんです。
A: 減数分裂は、生殖細胞特有の分裂で、二セットのゲノムがそのまま持ち越される普通の有糸分裂とは違うのですね。
勉: さっきのアポトーシスと、この減数分裂によって、人は生物学的にも時空間を越えてずっと繋がっているんです。
A: 我々は環境で世界と繋がり、生殖細胞で過去と繋がり、そして生産と消費で社会と繋がっている。まさに「全ては繋がっている」という訳ですね。長い間お話していただいてどうも有難うございました。

<エピローグ>

 これで僕らの対談は終わるけれど、僕はいつもこういう七面倒くさいことばかりを考えているわけではない。昼は大学の授業に出、夕方から夜にかけてはアルバイトで学費を稼がなければならない。ネットの維持費もかかるから、以前からやっているコンビニや図書館のバイトだけではなく、最近は子供の家庭教師も始めた。洋子とは夜ネットで交信する。彼女は相変わらずニースで画とテキスタイル・デザインの勉強を続けている。
 図書館でのバイトのおかげで、本はかなり読むようになった。本を読むのはいつも夜中だから、午前中の授業にはいつも遅刻気味だ。こんな具合だから、ゆっくりと考えを纏める暇がない。それがここのところ僕の悩みである。

奥沢勉

「僕のH2O−ブログ編」完


<あとがき>

 本文中にある「解剖学者のY先生」とは養老孟司さんことで、「最近の本」とは、「養老孟司、大田光、人生の疑問に答えます」(NHK出版)です。「僕の好きな生物学者のI先生」とは池田清彦さんのことで、引用した御本は、「虫の目で人の世を見る、構造主義生物学外伝」(平凡社)です。「政治経済学者のS先生」とは副島隆彦さんのことで、引用した御本は、「やがてアメリカ発の大恐慌が襲い来る」(ビジネス社)です。「作家のAさん」とは嵐山光三郎さんのことで、引用は東京新聞2007年2月19日の「渡辺和博氏の死」というコラム記事からです。「時間学を研究されているI先生」とは、井上慎一さんのことで、引用した御本は、「柔らかな生命の時間」(秀和システム)です。また、アフォーダンス理論については、佐々木正人さんの著書から多くの示唆を得ました。記して感謝いたします。     
                          
茂木賛
1/21/2011
「僕のH2O ブログ編」 最終回(2011年01月21日公開) |目次コメント(0)

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