A: さて、サイトにもうひとつ「点数は時間と同じ」という面白い指摘がありました。またちょっと引用しますね。「洋子に相談すると、『点数って、時間と同じね』と云ってきた。『面白いことをやっているときの時間は速く経つじゃない、そういう意味で役に立つ行為の評価の大きさと、その人にとっての時間の長さには相関関係があるのではないかしら。人生の長さって人それぞれでしょう、それってある種その人の持ち点だわよね』」というところです。このことと、いま話している通貨や金利の問題となにか関連があるように思うんですけれど。
勉: エンデの「モモ」じゃないけれど、金利を生み出す客観的な時間と、人生の持ち時間とは相容れないところがありますよね。金利を生み出す時間は、物理学的な座標軸上の空間を一定速度で流れていくというのが前提ですが、僕のいう生産と消費の交換価値は主観的なものですから、人それぞれに固有である人生の持ち時間の側にあります。前に話したアフォーダンスの理論にも「異所同時性」というコンセプトがあるんですよ。
A: 異所同時性?
勉: いくつもの「時間」や「場所」が知覚においては同時に存在するということらしいんです。生産と消費の交換も、交換に関わる人の頭の中に幾つもの「時間」や「場所」が同時に存在していることを前提にしていますから同じ話かもしれません。この辺はまだ勉強中です。
A: サイトに地域通貨の話が出てきますよね。「リアルとバーチャルとを結びつけるアイデアも盛んに寄せられた。とくに地域通貨との関連がよく話題に上った。『役に立ったこと』を、一定の価値に置き換え、通貨として流通させるという構想だ。ここでも価値の基準が問題になった。おもしろいのは、僕たちのやっていることにも、地域通貨を実際に運営している人たちにも、『金利』という発想がないことだった。価値基準さえ統一できれば、地域通貨との相互乗入れは十分可能だと思われた」というところです。
勉: そうか、そこでも金利のことに触れていましたね。生産と消費の交換価値はそもそも主観的なもので、通貨価値のような客観的な尺度を当てはめるのは無理があるし、本当は点数をつける必要なんてないんですが、僕のサイトのように日記的なものであったり、地域通貨のように狭い範囲で流通させる分には、点数をつける効用もあるのではと思っています。等身大の経済を回していくことは、役割分担を前提としたいまの社会ではむしろ必要なことですから。
A: 生活上、普通のお金も無視は出来ませんよね。
勉: そうですね。今の社会は役割分担が進んでいますから、全てを自給自足や地域通貨だけで回そうとしても難しいと思います。地域通貨を生活のベースにすることは出来ても、いろいろな人が関わる仕事をするためには、どうしても地域を跨いだ広い範囲で流通する広域通貨が必要になってきますね。
A: サイトでも、洋介さんのアドバイスとして「大きな事をやるためには、お金を貯めることも必要になってくる」と書いていますね。
勉: 先行投資を必要とするような大仕事は、広域通貨に頼らざるを得ないでしょうね。しかし、広域通貨でも、減価するお金とかいろいろな考え方があるようですから、これから勉強していこうと思います。大切なことは、僕たちの常識として、自己中心的ないきすぎた利潤の追求が過剰在庫や過剰投資を生み、消費先行型のゆがんだ共同体をつくりだしてしまった、ということを弁えておくことだと思います。<続く>