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■オリジナル作品:「続・記号のような男」(目次

「続・記号のような男」 第十四回

14.ヒアリング

 産業連合会はその後二ヶ月ほどかけて、駐車場候補地周辺の地主たちに対して匿名によるヒアリングを行った。候補地はショッピング・モールの東側、地主はすべて地元農家でその数は40戸だ。ヒアリングの結果、土地を売ってもよいと答えたのは40戸のうちの半数ほど。半数のうち、後継者がおらず土地を手放してもよいという農家が10戸、すでに耕作放棄地となっている畑の持ち主が6戸、もともと移住する予定だったという家が1戸、町の為になると思うから賛成するという農家が3戸ほどあった。それに対して保留すると答えた農家は15戸ほどだった。そのうち条件次第で売ってもよいと答えた農家が11戸、どちらかというとモール建設には反対と答えた農家が3戸あった。のこりの農家6戸はこのまま農業を続けたいと答えた。纏めると、

<土地を手放してもよい>:20戸

後継者がいない:10戸
耕作放棄地:6戸
移住予定:1戸
町の為になると思う:3戸

<保留>:14戸

条件次第で手放してもよい:11戸
モール建設には反対:3戸

<土地を手放したくない>:6戸

このまま農業を続けたい:6戸

ということで、現状、多くの農家が土地の売却に前向きであるということがわかった。この結果に専業農家/兼業農家のデータを加えると、

<土地を手放してもよい>:20戸

後継者がいない:10戸(兼業)
耕作放棄地:6戸(―)
移住予定:1戸(兼業)
町の為になると思う:3戸(兼業)

<保留>:14戸

条件次第で手放してもよい:11戸(専業3/兼業8)
モール建設には反対:3戸(専業2/兼業1)

<土地を手放したくない>:6戸

このまま農業を続けたい:6戸(専業4/兼業2)

となり、専業/兼業だけを纏めると、

専業農家:9戸
兼業農家:25戸
その他:6戸

となった。当然の傾向かもしれないが、兼業農家は「手放しても良い」が多く、専業農家は「手放したくない」(または保留)という結果だった。

 このヒヤリング内容を受けて産業連合会は、多くの農家が土地の売却に前向きであることがわかったとして、該当区域(市街地調整区域)における規制緩和議会承認のための答申案作成に入った。

 桑富市議会は、去年市長選挙と同時に行われた議員選挙によって、定員20名中、谷沢市長派(民和党)9名、島谷候補派(改進党)7名、その他4名という構成になっている。モール建設こそ桑富市発展の鍵だとする松井潤造は、地区ごとの議員数や所属派閥の状況などから、特にその他4名を標的にした多数派工作によって、過半数の議案賛成票を得ることを考えていた。彼らは政党のバックを持たないから金で動かすことが出来るだろう。桑富市の人口と、産業連合会が推定した各市議会議員の地盤および派閥構成は次の通り。

桑富町:人口約20千人、議員数4名(谷沢派2、島谷派1、その他1)
新桑富町:人口約30千人、議員数5名(谷沢派1、島谷派4)
有前町:人口約32千人、議員数5名(谷沢派3、島谷派1、その他1)
柿本町:人口約20千人、議員数4名(谷沢派2、島谷派1、その他1)
有先町:人口約18千人、議員数2名(谷沢派1、その他1)
合計:人口約120千人、議員数20名(谷沢派9、島谷派7、その他4)

 松井潤造はまた、議案が承認された後について、農業を続けたいという家もあるが他の場所に代替え地を用意するなどして対応する、駐車場建設に反対の農家については多数決をもって押し切る、それでも土地を手放したくないという農家については金を使うなり家族の弱みを握るなどして強引に賛成に回らせる、といった指針を秘かに仲間の市議や産業連合会の幹部たちに連絡した。

(つづく)
「続・記号のような男」 第十四回(2026年01月18日公開) |目次コメント(0)

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