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■オリジナル作品:「百花深処 I」(目次

「百花深処」 <宗教・思想基本比較表>

 参考までに、様々な宗教や思想の基本比較表を作ってみた。参照したのは『日本人のための宗教言論』小室直樹著(徳間書店)、『隠された歴史』副島隆彦著(PHP研究所)、『神道にはなぜ教えがないのか』島田裕巳著(ワニ文庫)など。

<ユダヤ教>
「対象」:ユダヤ教国
「至高」:ヤハウェ
「教義」:トーラー(啓典)
「信仰」:教義を守る
「特徴」:集団救済(排他的)。因果律。

<キリスト教(アタナシウス派)>
「対象」:キリスト教徒
「至高」:イエス・キリスト
「教義」:福音書(啓典)
「信仰」:至高を信ずる(カトリック:教会の教義を守る)
「特徴」:個人救済(排他的)。予定説。キリスト教にはアタナシウス派以外にアリウス派やマリア信仰などあり。

<イスラム教>
「対象」:イスラム教徒
「至高」:アッラー
「教義」:コーラン(啓典)
「信仰」:教義を守る
「特徴」:個人救済。生前は予定説、死後は因果律。

<儒教>
「対象」:儒教国
「至高」:天命
「教義」:五経や四書など(日本:論語主体)
「信仰」:教義を守る
「特徴」:政治による集団救済。因果律。時代を経て朱子学や陽明学が出る。

<小乗仏教>
「対象」:仏教徒
「至高」:法(ダルマ)
「教義」:戒律
「信仰」:教義を守る
「特徴」:個人救済。因果律。

<大乗仏教>
「対象」:仏教教団
「至高」:仏(ほとけ)
「教義」:仏典
「信仰」:教義を守る(日本:至高を信ずる)
「特徴」:集団救済。因果律。時代を経て様々な宗派が生まれる。天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗、日蓮宗、臨済宗、曹洞宗など(そのうち臨済宗と曹洞宗の禅宗は小乗仏教的な個人救済色が強い)。

<神道>
「対象」:日本国
「至高」:八百万の神々
「教義」:なし
「信仰」:至高を信ずる
「特徴」:集団救済(ただし現状維持程度)。予定説。

(注)「信仰」において「信ずる」とは、内面的に「至高」を念じ仰ぐこと、「教義を守る」とは、内面的に「至高」を念じ仰ぐと同時に外面的に「教義」を守ること。予定説とは、救われる者は予め定められているということ。因果律とは、救われるかどうかは「信仰」次第で決まる(原因が結果を齎す)ということ。

 個人救済宗教はキリスト教、イスラム教、小乗仏教であり、集団救済宗教は、ユダヤ教、儒教、大乗仏教、神道。これら七つの宗教のうちで一番融通無碍(よくいえば柔軟、悪くいえばいい加減)なのは神道であろう。日本人なら誰でも神国日本に住まうことが許され、教義もなく、拝むだけで(現状維持程度だが)ご利益も得られる。日本人は教義を作るよりも外来思想の習合が得意だ。神道は早くから中国の陰陽五行説や仏教、儒教などと習合し、教義のない部分をそれらの教えで補ってきた。日本の大乗仏教もその宗派の多くは仏を拝むだけで極楽浄土へ行けると説くわけだから他と比べると融通無碍。

 今後この比較表を踏まえながら、徳川時代の国学や蘭学、陽明学、さらには明治時代以降の国家神道などについて考えてみたい。また、先日<預治思想について>の項で、戦国時代→織豊時代→徳川時代においてその原点(天)が自然現象→天命→天皇と変遷していったと述べたけれど、それをこの比較表に即して表記してみると、

<天道思想>
「対象」:天道信者
「至高」:天道(自然現象)
「教義」:神仏儒などの宗教
「信仰」:教義を守る(儒教の教義を守る)
「特徴」:個人救済。因果律。

<預治思想>
「対象」:日本国
「至高」:天命
「教義」:天下布武(未完成)
「信仰」:教義を守る
「特徴」:政治による集団救済。因果律。教義は信長の死によって未完成。完成すれば儒教やキリスト教各派を併せた世界標準の教義となっていたかもしれない。

<徳川朱子学>
「対象」:日本国
「至高」:天皇
「教義」:神仏儒などの宗教
「信仰」:教義を守る(儒教の教義を守る)
「特徴」:政治による集団救済。因果律。

となるだろうか。<天道思想>と<徳川朱子学>における「信仰」がどちらも儒教の教義(日本では論語主体)を守るとなるのは、「教義」にある神仏儒のうち、神道には教義がなく信仰は至高を信ずること、日本に入ってきた仏教は大乗仏教で信仰の多くは至高を信ずること、よって守るべき教義は基本的に儒教のものだけ、となるからである。
「百花深処」 <宗教・思想基本比較表>(2018年03月17日公開) |目次コメント(0)

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