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■オリジナル作品:「百花深処 I」(目次

「百花深処」 <古代の民族文化 IV>

 ここまで日本の父性(国家統治能力)の源泉に関して、

(1) 騎馬文化=中世武士思想のルーツ
(2) 乗船文化=武士思想の一側面
(3) 漢字文化=律令体制の確立

と出揃ったところで、古代からの宗教、神道について考えてみたい。神道については、以前ブログ『夜間飛行』の方でも書いたことがある(「神道について」)。神道の特徴は、開祖も教義も救済もない、ないないづくしの不思議な宗教だということである。複眼主義の対比、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳(大脳新皮質)の働き−「公(Public)」−「都市」
A 男性性=「空間重視」「所有原理」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体(大脳旧皮質及び脳幹)の働き−「私(Private)」−「自然」
B 女性性=「時間重視」「関係原理」

において、宗教の「教義」はA側、「信仰」はB側と親和性が強いのだが、神道にはA側がない。神道は、中国の陰陽五行思想や仏教、儒教などと習合し、その教義によってA側を補ってきた(複眼主義ではA、B両者のバランスを大切に考える)。

 律令体制を確立する漢字文化(を担う為政者たち)は、共同体の紐帯としてこの神道を採用した。その際、外来思想・宗教によって教義を補うばかりではなく、

@ 海洋民族としての倭人
A 狩猟民族としての縄文人
B 農耕民族としての弥生人
C 北方アジア由来の遊牧民族

それぞれの信仰、歴史や建物などを、神話や神社という形でその内部へ取り込んだ。『古代史の謎は「海路」で解ける』長野正孝著(PHP新書)から引用しよう。

(引用開始)

 しかし、この国の神道のすばらしさは、天の神(皇族、貴族)も地の神(庶民)も、世に貢献すれば尊敬されるという仕組みをつくり、封建時代の他国の王権ならば「管理外の民」として迫害されるような民――たとえば海人達でさえも、数多くの社に祀られたことにある。
 宗像海人族は宗像大社、瀬戸内の航路開削に携わった海人は厳島、大三島そして住吉大社、日本海にも氣比神宮、織田神社、弥長神社など、全国に数えきれないほど祀られている。

(引用終了)
<同書 276−277ページ>

神道に包摂されたのは、その他、Aの山岳信仰、B、Cの星辰信仰などなど。(1)も(2)も思考ツールに漢字・漢文を用いたから、中世に至ってもこの仕組みは維持される。平氏は厳島神社、源氏は鶴岡八幡宮をそれぞれの守護神とした。(1)と(2)は、(3)の影響下にあったのである。

 神道による各民族信仰、歴史と建物などのフィクション化。これにより古代史・各民族文化の真相は正史の裏に隠された。しかし、日本の将来の在り方を考える為に、真相は掘り起こされなければならない。これからも研究を続けたい。
「百花深処」 <古代の民族文化 IV>(2017年07月24日公開) |目次コメント(0)

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