文学(小説)の電子書籍コンテンツ・サイト「茂木賛の世界」


ここから本文です。(クリックすると本文を飛ばしてメニューに進みます)

■オリジナル作品:「百花深処」(目次

「百花深処」 <古代の民族文化 II>

 前回<古代の民族文化>において、

@ 海洋民族としての倭人
A 狩猟民族としての縄文人
B 農耕民族としての弥生人
C 北方アジア由来の遊牧民族

という4つの民族文化を挙げ、中世武士思想のルーツが坂東や東北・北陸の騎馬文化だとすると、それはAとCのブレンドということになると述べた。

 武士思想の側面のもう一つは、@を中心とした西国の乗船文化であろう。ブログ『夜間飛行』「古代史の表と裏」の項で紹介した長野正孝氏の『古代史の謎は「海路」で解ける』(PHP新書)には、その乗船文化の歴史が詳しく書いてある。同書の紹介文を、帯表紙、カバー表紙裏、帯裏表紙の順で再掲しよう。

<技術者の「知」が文献学の壁を破る>
船や海への分析から、邪馬台国が日本海側にあることが見えてくる。深く納得。(ベストセラー『日本史の謎は「地形」で解ける』著者竹村公太郎)

「魏志倭人伝」によると、卑弥呼の特使である難升米が洛陽まで約2000kmの航海を行ったという。邪馬台国が畿内の内陸にあった場合、彼らは本当に対馬海峡を渡ることができただろうか。またこの時代、瀬戸内海は航路が未開発であったため通ることができず、交易は主に日本海側で行われていたと考えられる。当時の航海技術や地形に基づき、海人(かいじん)の身になって丹後半島の遺跡に身を置けば、鉄と翡翠で繫栄する「王国」の姿が見えてくる……。さらに応神帝の「海運業」や「大化の改新」などの謎を、港湾や運河の建造に長年従事してきた著者が技術者の「知」で解き明かす。

〇 丹後王国をつくった半島横断船曳道
〇 丹後王国の繁栄をつくった日本最古の「製鉄・玉造りコンビナート」
〇 「神武東征」は当時の刳り船では不可能だった
〇 卑弥呼の特使難升米も瀬戸内海を通れなかった
〇 敦賀王国をつくった応神帝と氣比神
〇 雄略帝の瀬戸内海啓開作戦
〇 継体王朝が拓いた「近畿水回廊」とは?
〇 奈良の都の出勤風景と「無文銀銭」・「富本銭」の謎
〇 難しかった孝徳天皇の難波津プロジェクト
〇 「大化の改新」の陰に消された日本海洋民族の都「倭京」
〇 解けた「音戸の瀬戸開削」の謎――厳島詣の道

(引用終了)
<引用者によって括弧などを追加(フリガナ省略)>

長野氏は同書「はじめに」の中で、“日本民族は、農業民族でもなければ騎馬民族でもなく、「海洋民族」であったという考えを共有していただければ、それに勝る喜びはない。”と述べておられる。

 詳細は同書をお読みいただくとして、「おわりに」において長野氏は次のように書く。

(引用開始)

 天武天皇の代になり、国号を日本とし、繁栄した時代に入った。めでたいことは大和朝廷、日本国誕生であり、悲しいことは海人族――そして「航海王」達の滅亡であった。日本海の歴史が消されたことであった。(中略)
 九州倭国の海人は、後日、瀬戸内海で潮に乗って活躍した船乗りになり、「塩飽の水主」と呼ばれる熟練した船乗りになった。村上衆、松浦党は、官船の警護をし、糊口をしのいだものの、一部は海賊となって瀬戸内海や東シナ海に出没し、戦国時代に海軍として戦に参加した。朝廷が沿岸諸国の国司に命じて海賊討伐をさせても効果はなく、運ばれてゆく献米は途中の水路で奪われた。やがて時代が下ると、「欣求浄土」「八幡大菩薩」の旗を掲げ、東シナ海まで遠征する「倭寇」となって、中世の東アジア一帯を恐怖に陥れるようになる。この海賊の恐怖は、秀吉の海賊禁止令まで続いた。

(引用終了)
<同書276ページ(フリガナ省略)>

海人族とは上記@であり、航海王達とは@、B、Cのブレンド、敦賀王国をつくった応神帝、瀬戸内海啓開作戦を指揮した雄略帝、近畿水回廊を拓いた継体王朝を指す。

 倭人・航海王たちの「航海や交易を通じて培われた臨機応変な対応力」は、平安末期、平氏一門によって復興・継承され、武士思想の一側面を形成した。しかし、壇ノ浦の合戦において平氏が源氏に敗れたことで、中世武士思想には、坂東の騎馬文化の方が色濃く残った。とはいえ、倭人・航海王たちの乗船文化は、日本の父性(国家統治能力)を考える上において、欠かせない要素といえるだろう。
「百花深処」 <古代の民族文化 II>(2017年07月09日公開) |目次コメント(0)

コメント

コメントを書く

お名前(必須)
メールアドレス:
ホームページアドレス:
コメント(必須)

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。


茂木賛の世界 / World of San Motegi

  • 茂木賛の世界について
  • 著者プロフィール
Copyright © San Motegi Research Inc. All rights reserved.

このページはここまでです。(クリックするとこのページの先頭に戻ります)