以前「KURA(くら)」という信州の情報誌を読んでいたら、ガラス造形作家松原幸子さんの「Book of the sky」という作品が目に留まった(2011年7月号)。素敵な装丁本のなかに、白い雲が浮かぶガラスが納められでいる。
記事によってその年の5月、安曇野のギャラリー・シュタイネで作品が展示されたことを知り、その冬、私はギャラリーを訪れた。幸い幾つか作られた「Book of the sky」のうちのひとつがまだギャラリーに残っていたので、さっそく購入、いま私のhome/officeに飾ってある。この小説のインスピレーションは、その作品と、ギャラリー・シュタイネのご主人との四方山話から生まれた。
小説のテーマの方は、2007年以来掲載を続けているブログ「夜間飛行」の「
“わたし”とはなにか I~III」(2011年7月)や「
流域思想 I~II」(2010年5月)などの記事による。
仕事などで幾度も訪れた松本という街、“わたし”の存在論や、流域の三層構造(奥山・里山・家の奥)、「Book of the sky」というガラス作品、安曇野のギャラリーの佇まいなどが脳裏で融合し、いわば即興的にこの短編が出来上がった。
茂木賛
7/21/2014